窓際の席は、桟橋が斜めに見えるほうを頼んでおいた。
湖を正面にすると、日が落ちてからは室内ばかり映る。この席なら、少し顔を向けるだけで対岸の灯まで見渡せた。
彼女の椅子を引き、私は壁側へ座った。
窓をわずかに開けると、冷気が卓布の端を持ち上げた。彼女は足元の鞄を脇の椅子へ移す。上着はまだ脱がず、メニューを膝に置いていた。
魚は私が勧めたものに決まった。
付け合わせが以前とは変わっている。前のものも悪くなかったと給仕に伝えると、彼女は写真のないメニューをもう一度開き、料理の名を指でゆっくりたどった。
以前ここへ連れて来た人は、魚より窓の外を長く見ていた。
船が出るまで、グラスにも手をつけなかった。
あのときと同じ時刻に予約してある。
対岸の山は裾から暗くなり、輪郭が水へ近いところから失われていた。灯が一つ点く。その下の水にも短い光ができ、細かく揺れた。
彼女が窓の留め金へ手を伸ばした。
こちらを見たので頷く。
窓が閉まると、卓布の端も止まった。
桟橋の先で、白い灯が揺れた。
私はグラスを置いて窓へ顔を向ける。彼女も同じほうを見た。
小さな船が岸を離れてゆく。船尾で水が明るく割れ、その後ろに滑らかな筋が伸びた。灯はゆっくり遠ざかり、筋だけがしばらく桟橋のほうへ残っている。
魚が運ばれてきた。
彼女は給仕の手元を見ながら、グラスを少し横へ寄せた。私の前にも皿が置かれる。焼けた皮と温かいソースの匂いが上がった。
彼女が取り皿を寄せる。
魚の身を分け、骨を抜いた。皿の縁を指で押さえて向こうへ戻すと、彼女は軽く頭を下げ、皮の焼けたところから箸を入れた。
私も魚を切った。
皮の下から白い身がほどけ、ソースを吸った。
顔を上げると、船の灯は対岸の灯へ近づいていた。
後ろの筋もまだ見えているようだった。
窓に給仕の姿が映った。
白いシャツが湖の上を横切り、通り過ぎる。
もう一度外を見ると、どこに筋があったのかわからなかった。
デザートは彼女が選んだ。
私はいつものものにするつもりでいたが、一皿を二人で分けることになった。
白い皿に菓子が二つ、少し離して載っている。間にはソースが細く引かれ、片方にだけクリームが添えてあった。
皿を回して、彼女の前へ寄せる。
彼女は一つ目を切り、もう一つにも匙を入れた。それぞれを少しずつ残してから、クリームのある側をこちらへ向け直した。
私はそこへ匙を入れた。
切り口へソースがゆっくり流れ込む。
窓の外では、山はもう見えなかった。
湖面も淡く曇り、対岸の灯だけが浮いている。
私はもう一口取るために、皿を少し引き寄せた。





