成立を知らせる連絡には、添付がなかった。
本文をもう一度読み、会議室の向こうにいる担当者へ頷いた。彼は椅子を寄せ、準備してあった告知を開く。
公開の時刻を確かめる。
私が送信を指示すると、二人とも画面を見たままになった。
窓には室内が映っていた。夜のうちに降り始めた雪は、そこからはもう見えない。
机には、相手先から届いた役職の一覧が一枚残っている。
同じ課長という名でも、預かる人数や決裁できる範囲が違った。共通の等級へ読み替えるため、役割を一つずつ照合してきた。欄外には、先方の担当者が書き添えた呼び名がまだ残っている。
給与の表は、途中から列を増やした。
同じ名の手当にも別の条件があり、一つの基準をそのまま全員へ当てることはできなかった。成立日から切り替えるものと、従来の扱いを残すもの。その境を決め、適用する順序を揃えた。
担当者が告知の表示を確かめ、画面をこちらへ向ける。
社員向けの文は、昨夜まで見ていたものと同じだった。
待遇についての一行で、目が止まった。
そこを過ぎ、問い合わせ先の番号を確かめる。
社長から短い返信が届いた。私の名に続いて労いがあり、次の説明会への出席を求める文がある。了承を返す。
ほどなく、相手先の担当者からも連絡が来た。
ようやくここまで来た、という一文で終わっていた。
冷めたコーヒーを飲んだ。
飲み終えても、カップをしばらく持っていた。
担当者を帰し、会議室の照明を半分落とす。
窓の下に、道路の白いところが見えた。中央はすでに濡れた色をしている。歩道の縁には、まだ雪が残っていた。
役職の一覧を折り、鞄へ収める。
椅子の背から上着を取ったところで通知が鳴った。
契約関係の控えが一式届いている。
保存先を指定し、受信画面へ戻った。
新しい連絡はなかった。
上着を着て窓際へ行く。
向かいのビルの足元まで光が差していた。舗装の目が透けるほど薄くなった雪も、縁石へ寄った白いかたまりも、同じ明るさの中にある。
横断歩道を渡る人の影が、その上を長く滑った。
携帯で来週の予定を開く。
相手先との最初の打合せは、仮に押さえてあった時刻のままだった。
「仮」の一字を消す。
登録した。
机へ戻る途中、空いた椅子を一脚、卓の下へ押し込んだ。
自分の席へ座る。
画面には窓が映っていた。
角度を少し変えると、窓の明るさが端へ退いた。
受信画面を開いた。





