Umbras dimitto, lucem colligo.

ぼんぼりにだらりの帯ぞ鐘霞む

通りでは、迎えの車が一台ずつ人を拾っていた。その脇を抜け、門の奥へ入る。砂利を踏んで玄関へ近づくと、内側の灯が明るくなった。靴を脱いで振り返ったときには、もう爪先が外へ向けて揃えてある。

廊下には庭の匂いが入っていた。先を行く足袋の白さが敷居で止まり、次の間の暗がりへ入った。

座敷へ通されたとき、彼女はまだいなかった。庭にはぼんぼりが一つ、植込みの向こうに浮いている。

襖が開いた。以前会ったときとは帯が違っていた。柄を尋ねると、彼女は膝を揃えたまま腰から上だけをこちらへ向けた。帯がわずかに捩れ、明るい糸が先に光った。指が柄をたどると、爪の先で布が少し沈む。私は柄よりも、膝を動かさずにその向きになったことを見ていた。

酒を注ぐために腕が伸び、袖が卓の縁へ垂れた。手首が上がると、その内側の白いところが短く現れる。酒が杯へ落ち、指へ重さが加わった。手が戻ると、袖口も手首を隠した。

舞が始まった。身体が向きを変えてから帯の柄が現れ、袖が収まっても裾だけが揺れている。ぼんぼりの灯を受けるたび、明るい糸だけが浮いた。曲が終わるまで、その光を見ていた。

やがて膳が下げられた。彼女が立つと、帯の裾が畳を離れた。座っていたあいだ身体の後ろへ収まっていたものが長く垂れ、一度だけ揺れた。

玄関から庭へ下りる。彼女もあとから来た。ぼんぼりの下を通るたび、帯は地の色を取り戻し、灯を離れると柄だけが残った。私は歩調を少し落とした。

鐘が鳴った。

彼女が顔を上げる。その動きで襟の後ろがわずかに離れ、首筋へぼんぼりの灯が触れた。私も庭の向こうを見る。屋根はいくつも重なり、鐘楼がどこにあるのかはわからない。

次の鐘まで、袖も帯も動かなかった。

もう一つ鳴った。響きは薄くなり、どこで消えたのか聞き分けられない。

彼女がこちらへ向き直ると、襟の影に首筋が戻った。礼をする。帯が遅れて傾いた。

門を出て、車へ乗る前に振り返った。

ぼんぼりの下に彼女がいた。

灯の外へ半歩退くと、帯の柄だけがしばらく見えていた。

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